旧ソ連の神経生理学者であるベルンシュタインの報告がきっかけとなり、40年ほど前の旧東ドイツ時代に、
「コーディネーション」という概念がまとめられました。その後、コーディネーショントレーニングは、旧共産圏を
中心にコーディネーション能力(以下の7つの能力)を高める方法として、研究・開発が進められました。
現在では、ヨーロッパを中心に学校体育やスポーツ現場において多くの成果を挙げており、
日本では、子どもの体力低下や少子高齢化などの様々な社会問題に対する解決策として、
あらゆる分野から注目を浴びています。1 コーディネーションって?
一般に、スポーツ選手について「あの選手は身のこなしがよく、運動神経が優れている」とか、「状況判断がいい」「ボールさばきがうまい」といった表現をします。子どもたちの動きに目をやると、バランスをとるのがうまい子や、リズムに合わせてからだを動かすことが得意な子がいます。このような人たちの動きに隠されているのが「コーディネーション能力」であり、この能力を高めようとするのが、「コーディネーショントレーニング」です。
コーディネーション能力とは、状況を目や耳など五感で察知し、それを頭で判断し、具体的に筋肉を動かすといった一連の過程をスムースに行う能力をいいます。専門的な技術を覚えるにあたっての、前提条件(レディネス)ともいうべき動きづくりと深く関わりあっています。第一線で活躍する競技者には、もともとこのコーディネーション能力の高い人が多く、彼ら、彼女らの大半は、子どものころに人一倍さまざまな遊びを体験していることが指摘されています。
2 コーディネーションの内容
1970年代に、旧東ドイツで開発されたコーディネーショントレーニングは、その後いろいろな検討が加えられ、現在7つに分類されています。
T.★定位能力★
定位能力は、決められた場所や動いている味方・相手・ボールなどと関連付けながら、動きの変化を調節することを可能にします。オニごっこは、代表的な実践例です。将来、アクロバティックな技術系や状況対応が求められるボールゲーム系種目を目指すには、欠かせない能力といわれています。
U.★変換能力★
変換能力は、急に状況が変わり違う動きをしなければならなくなったとき、条件にあった動作の素早い切替を可能にします。定位能力と反応能力との間に、密接な関係を持っており、予測し、先取りする力でもあります。ステレオタイプ化を防ぐためにも大切であり、フェイント動作がポイントです。
V.★リズム能力★
リズム能力は、ひとつは耳による音や音楽、あるいは真似をするときの目からの情報を、動きによって表現することを可能にします。もう一方では、イメージとして持っている動きのリズムの現実かを可能にします。新体操やフィギュアスケート、シンクロなど音楽の伴奏に合わせて演技する種目や、ボートあるいは集団演技では特に大切です。リズム能力は、あらゆるスポーツにおいて、上達に欠かすことのできない基礎となります。
W.★反応能力★
反応能力は、ひとつないし複数の合図を素早く察知し、適時にそして適切な速度によって、合図に対する正確な対応動作を可能にします。合図には、スタートの音や味方の動き、柔道やレスリングなどの触覚または筋感覚によるものも含みます。ジャンケンやボールを使ったたくさんの実践例があります。
X.★バランス能力★
バランス能力は、空中や動いているときの全身バランスを保つことや、崩れた体勢を素早く回復することを可能にします。あらゆる運動の基礎をなす前提条件です。回転や旋回を加え三半規管を刺激したり、ケンケンなどで意図的にバランスを崩したうえで行います。技術系や格闘技系には特に必要で、スキー・スケートや水上種目などでは、それ次第で優劣が決まりかねません。
Y.★連結能力★
連結能力は、からだの関節や筋肉の動きを、タイミングよく無駄なく同調させることを可能にします。フィギュアなどの連続ジャンプや器械体操の旋回、あるいは複数の動作を連続する場合などでこの能力は発揮され、技術系やボールゲーム系種目で重要です。力加減やスピード調節によって、動きをスムースにする能力です。
Z.★識別能力★
識別能力は、手や足、頭部の動きを微調節する際の視覚との関係(ハンド・アイコーディネション)を高め、ボールやハンドルなど用具操作を精密に行うことを可能にします。テニスや野球などは、ボールを見てラケットあるいはバットを操作するので、特に重要であるといえます。ボール感覚と呼ばれるものも、識別能力に含まれています。
NPO法人 日本コーディネーショントレーニング協会 (JACOT) より